いまから40年程前、カンボジアではポル・ポト政権によって大量虐殺が行われていました。
カンボジアの過去を知る上で欠かせないのが、プノンペンにある「トゥール・スレン博物館」という場所です。
本記事では、下記のような悩みを解決できます。
- トゥール・スレン博物館とは?
- トゥール・スレン博物館内部のようすは?
- トゥール・スレン博物館を訪れる前に知っておくべきことは?
この記事を読めば、プノンペンにあるトゥール・スレン博物館について知ることができますよ。
まずは「トゥール・スレン博物館とは?」から解説していき、次に「トゥール・スレン博物館内部のようす」を写真付きで紹介していきますね。
プノンペンにあるトゥール・スレン博物館とは?
ポル・ポト政権に対して反抗した人・不満を言った人・無実の罪を着せられた人(主にスパイ容疑)を連れてきていたのが、プノンペンにある「トゥール・スレン強制収容所(S21)」です。
ここへ連れてこられた人たちは、年齢・性別・職業関係なくポル・ポト政権の治安警察サンテバルによって尋問や拷問をされ、赤ちゃんは親から引き離されすぐに処刑されていました。
正確な数字は出ていないそうですが、15,000人〜20,000人が収容されたと言われており、生存者は12人しかいなかったそう(後に発見された文書から100人以上いたとも言われています)。
それが意味するのは、「ここへ連れてこられたら生きて帰ることはできない恐ろしい場所だった」ということ。
名称 | Tuol Sleng Genocide Museum |
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営業時間 | 8:00〜17:00 |
入場料 | 10〜18歳:3$、18歳以上:5$ |
日本語音声ガイド | 3$ |
住所 | St. 113, Beoung Keng Kang III, Chamkarmorn(GoogleMapで開く) |
実際にトゥール・スレン博物館へ行ってみた【体験談】
実際にトゥール・スレン博物館へ行ってきたので、内部レポートをしていきたいと思います。
敷地内には4つの建物(A棟・B棟・C棟・D棟)があり、強制収容所になる前は小学校と高校の校舎として使われていたそうです。
一般公開されたばかりの頃は、多くの人が家族の安否を確認しに訪れたり、建物内は死臭もかなり漂っていたそうですよ。
上記の写真は、民主カンプチアのポル・ポト首相(写真上)とトゥール・スレン強制収容所所長のドッチ(写真下)という人物。
カンボジアの歴史を学ぶ過程でよく出る名前なので、覚えておいて損はないかなと。
ここから先、当時の残酷な写真や犠牲者の写真が掲載されているので注意してください。
A棟:重要人物を収容していた特別室
A棟の各教室には、政府高官などの重要囚人が収容されていました。
部屋の中へ入ってみると、実際に使用されていた鉄製のベッド・鉄製の足かせ・トイレ代わりの弾薬箱が展示されており、当時の状況が再現されています。
柔らかいマットレスなどは敷かれずに縛りつけられ、尋問・拷問が行われていたんだとか。
今なお残る床に染み付いた血痕の跡が、当時の悲惨さを物語っていますね。
ベトナム軍がこの強制収容所を発見した際にみつけた遺体写真も何枚か展示され、どのような状態で放置されていたのかや床に広がる血痕をはっきりと確認することができます。
尋問・拷問時の悲鳴が他の囚人に聞こえないように、部屋の窓をガラスにしたり、換気口を板で塞いでいたそうですよ。
さらに驚いたのが、看守の多くが少年だったということ。ポル・ポト政権では、自分たちの思い通りに動かせる少年兵士をさまざまな場面で使っていたそうです(キリング・フィールドで処刑を担当していたのも少年兵士)。
ベトナム軍とポル・ポト政権打倒を目指す「カンボジア球国民族統一戦線」によって、1979年1月に首都プノンペンが制圧されると、トゥール・スレン強制収容所の存在も明らかとなりました。
その時発見された14人の遺体をA棟・B棟前の広場に埋葬しています。
近くには、水の入った甕に顔を沈める大型の拷問器具も展示。
B棟:強制収容所へ連れてこられた人の写真を展示
4つの建物(A棟・B棟・C棟・D棟)の中で、一番入るのを躊躇したのがトゥール・スレン強制収容所へ連れてこられた人たちの写真を展示しているB棟です。
ここへ連れてこられたのちに殺されてしまった人や、拷問によって亡くなった時の写真が展示されていました。
正直、こんな写真まで掲載する必要があるのかと思ってしまいます。
上の写真はモザイク処理していますが、実際展示されている写真にはモザイク処理などはされていません。
収容されてしまった人たちの目を見ると、まるで自分に助けを求めているように感じてしまい、長時間この空間にいることはできませんでした。
写真の中には子どもも見受けられ、なぜこんなにも残酷なことが出来たのだろうと思うばかり。
C棟:収容者が暮らしていた狭い独房
C棟は、トゥール・スレン強制収容所へ連れてきた人たちの収容施設として使われていました。
1階はレンガ造りの独房、2階は木製の独房、3階は雑居房となっており、部屋の壁には穴が空けられ棟の端から端へ移動できるようになっています。
昼間は日光が室内に差し込んで写真のように明るかったのかもしれませんが、日没後は電気もなかったため真っ暗だったに違いありません。
独房といっても1室1室はとても狭く、こんな空間で尋問・拷問を怯えながら待っていたと思うと、本当に言葉が出てきませんでした。
また、収容した人の逃亡や自殺を防ぐため、廊下には有刺鉄線が張られています。
D棟:実際に使用していた拷問器具を展示
実際に使われていた拷問器具を展示しているのがD棟。
拷問器具の使い方はイラストで描かれており、どのように使われていたかを理解することができます。
コスト削減のため、手持ち拷問器具の多くは農具だったそうですよ。
身に覚えのない罪だとしても、認めなければ幾度となく尋問・拷問が繰り返されたので、苦痛から逃れるために罪を認めてしまう人も多かったようです。
多くの人が尋問・拷問の苦痛から事実とかけ離れた自白をさせられ、全く身に覚えのない罪で殺されました。
トゥール・スレン強制収容所から生き延びた男性に遭遇
敷地内の売店に立ち寄ってみると、トゥール・スレン強制収容所の生存者の一人であるChum Manhさんという方が本を売っていました。
Chum Manhさんが生存できた理由として、ミシンを修理する能力があったからと海外メディアで書かれています。
ただ、彼の奥さんと小さな子どもは、クメール・ルージュによって殺害されてしまったそうです。
何冊か本を出版しているようでしたので、その中から1冊を選び購入。快く写真撮影にも応じてくれ、購入した本にサインまでしていただきました。
トゥール・スレン博物館までの行き方
トゥール・スレン博物館までの行き方は、下記の4つ。
- トゥクトゥク
- バイクタクシー
- タクシー
- レンタルバイク
トゥール・スレン博物館しか行かないのであれば、トゥクトゥクまたはバイクタクシー。キリング・フィールドも一緒に訪れるならば、トゥクトゥクという感じですね。
Grab Taxiを使えば安く利用することができますが、2ヵ所訪れるのなら個人手配でトゥクトゥクを半日チャーターするといいでしょう。
交渉次第になりますが、20$ほどでチャーターできるのではないかなと。
カンボジアでの呼ばれ方が違うためか、ドライバーに目的地が伝わらないことが多々ありました。そういった時は、ガイドブックや地図アプリを見せるとすぐに理解してくれることが多いです。
トゥール・スレン博物館を訪れる前に知っておくべきこと3つ
事前に知っておきたいことは、下記の3つです。
- 日本語音声ガイドは必ず借りよう
- なるべく露出の多い服装は避ける
- プノンペンにあるキリング・フィールドも一緒に訪れよう
その①:日本語音声ガイドは必ず借りよう
現地オプショナルツアーを予約しないのであれば、日本語音声ガイドを必ず借りるようにしましょう。
正直、詳しい説明を聞きながらまわらないと、ただ展示品を見るだけになるため勿体ないです。
予算に余裕があるなら、ぜひポル・ポト政権時代を知っている現地ガイドから話を聞いてみてください。
貴重な経験となることは間違いありませんし、疑問点をその場で質問できるのも日本語ガイド付きオプショナルツアーの魅力ですよ。
その②:なるべく露出の多い服装は避ける
寺院や遺跡ほど服装に関して厳しくありませんが、男性・女性ともに露出の多い服装は避けるようにしましょう。
服装のOKラインは、下記を参考にしてください。
- 男性:半袖&膝が隠れる長さの短パン
- 女性:半袖&長ズボン
上記の服装でいれば、寺院や遺跡を訪れた際も入場拒否される心配はないと思います。
気持ちよく観光するためにも、こういったルールは守るようにしましょう。
その③:プノンペンにあるキリング・フィールドも一緒に訪れよう
トゥール・スレン強制収容所で尋問・拷問を行った後に連れて行かれたのが、プノンペン中心部からトゥクトゥクで約30分のところにある「キリング・フィールド」。
名前の通り処刑場として使われていた場所で、敷地内のいたるところに遺体が埋められていました。
とても悲惨な場所ではありますが、トゥール・スレン博物館へ行くならば必ず訪れてほしいです。
キリング・フィールドについては、こちらの記事で詳しく書いています。
【プノンペン】キリング・フィールドはポル・ポト政権時代の処刑場です
名称 | Choeung Ek Genocidal Center |
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営業時間 | 7:30〜17:30 |
入場料 | 6$ |
日本語音声ガイド | 無料 |
住所 | GoogleMapで開く |
まとめ:カンボジアの歴史を知りたいなら訪れるべき場所です
今回は、プノンペンにあるトゥール・スレン博物館をご紹介してきました。
実際に使用されていた拷問器具の数々、犠牲となってしまった人たちの写真、そのどれもがリアル過ぎて当時の状況を頭の中でとても鮮明に想像できてしまうんです。
正直、展示品の中には気分を悪くするようなものも多く含まれているため、全ての人にオススメできる場所とは言えません。
ただ、カンボジアの歴史を知るためには欠かせない場所なので、ぜひ一度訪れてみてほしいです。
カンボジアの歴史を知ることができるオススメの書籍2冊も載せておきます。実際に読んで参考になったものを選んだので、興味のある方は読んでみてください。